ACE阻害薬って降圧薬だよね⁈
降圧薬ってやたら多いし、カタカナで長い名前だし覚えづらいのよね
詳しい作用とか副作用は自信ないな
この患者さん血圧高くないのにACE阻害薬飲んでるのよね
薬の本で調べてみたけど何でこの患者さんが内服しているかがいまいち結びつかないのよね
日々の配薬確認で指差し声出し確認している薬の名前
これを一つ一つ作用から副作用まで覚えるのは本当に骨が折れる
作用副作用は本を調べれば書いてあるけど、この患者さんにどういう理由で処方されているかに繋げて考えるのは難しい…けどそこが知りたい!!
お薬の本ではわかりずらい「なぜこの薬が処方されているか」が分かる✨
ACE阻害薬編を臨床に必要なところだけにギュッと絞って徹底解説します
血圧上昇の理由
ACE阻害薬のお話の前に、血圧が上がるってなんだか悪者イメージがありませんか?
高血圧は様々な疾患のリスク因子と言われています
ではなぜ、人の体は血圧を上げるのか?その必要があるのか?
薬効を理解するためにまずは血圧上昇の仕組みについて説明します
時はさかのぼり、人類がまだマンモスを狩って生活をしていた時代
日々の食事や水分が十分に取れないことが当たり前で脱水や出血など、循環血液量(流れている血液の量)が減ってしまうリスクと隣り合わせでした
生き残るためには循環血液量の維持や血圧を上げる必要がありました
流れてくる血液が減ってきた!という緊急事態に最初に気が付くのは腎臓です
腎臓には循環血液量の約20%が流れています
腎血流量が低下すると腎機能が低下する
そのため腎臓は循環血液量の低下にとても敏感!
何とかして循環血液量を増やさなければ!となり
腎臓は緊急事態宣言、「レニン」を放出します
問題とゴールを整理しよう 血圧上昇がゴールだった?
<問題点>
循環血液量が減ったこと
<ゴール>
循環血液量を維持、または増やすこと
RAA系(ラス)とは レニン放出から始まる循環血液量を増やそうプロジェクト
レニン放出からスタートする、循環血液量を守ろうプロジェクト!これがすなわちRAA系(ラス)の正体です
病棟でよく医師が「ラスが亢進してる」っていうの聞いたことある!
これのことだったのかぁ
レニンから始まるこのなんやかんやは置いておいて覚えておいてほしいのは
アンギオテンシンⅡを召喚することが目的だというところです
・RAA系(ラス)亢進の目的は循環血液量を増やすこと
・アンギオテンシンⅡを作り出すためにレニンは放出される
アンギオテンシンⅡの2つの作用
アンギオテンシンⅡの2つの作用について紹介します
アンギオテンシンⅡの作用その1 血圧上昇
その1:AT1受容体に働き、血管を収縮させる
‶血管を収縮”ってよく聞くけどいまいちイメージ湧かないのよね
そうね…。
例えばペラペラのカーテンにボールをぶつけたらボールは跳ね返ってこないけど
コンクリートをぶつけたらボールは跳ね返ってくるわよね
このカーテン、コンクリートを血管の壁
ボールを血液に置き換えて考えてみて
アンギオテンシンⅡは血管の壁をカーテンからコンクリに変える力を持っているの
アンギオテンシンⅡは血管を収縮させて血圧を上昇させる
アンギオテンシンⅡの作用その2 循環血液量増加
その2:アルドステロンを召喚(活性化)
アルドステロンはミネラルコルチコイド受容体に作用し血中のカリウムを捨て、ナトリウムを再吸収します
ナトリウムだけでは血管の中に入れないためナトリウムは水と結合して血管内に入ります
その結果血液の量(循環血液量)が増えます
増えた血液を循環させるために圧が必要となるため血圧も上がります
・アンギオテンシンⅡはアルドステロンを活性化させる
・アルドステロンの働きで循環血液量は増加し、血圧は上昇する
ACE(エーシーイー)阻害薬の覚え方
時は過ぎ現代です
文明は進み、命の危険を冒して狩りする必要はもうない
日々の飲み水や食事に困らない飽食の時代がやってきました
大量出血や脱水のリスクは減り血圧を上げなくてはいけない緊急事態は減りました
大量出血なんてしていないのに腎臓は今日もレニンを大放出、元気いっぱい高血圧♪
その理由はさておき、
新たな血圧上昇という人類の大問題を救うべく救世主の登場です
ACE阻害薬
救世主にふさわしく別名:エース
○○プリルときたらACE阻害薬と覚えましょう
ACE(エーシーイー)阻害薬の作用
‶なにやかんやあってアンギオテンシンⅡを召喚”の図
先ほども出てきましたが大事なことなのでもう1度
この図の中で2つの作用(血圧上昇・循環血液量増加)を発動させることができるのはアンギオテンシンⅡだけです
ACE阻害薬はアンギオテンシンⅠからアンギオテンシンⅡになるために必要なアンギオテンシン変換酵素を働けないようにして、アンギオテンシンⅡを作らせません
なのでアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬という名前
アンギオテンシン変換酵素(ACE)を取り上げられたため、アンギオテンシン召喚は失敗に終わりアンギオテンシンⅡの作用も発動しません
作用その1 血管の収縮を抑制、血圧上昇を阻止する
血管の壁はカーテンからコンクリートのように固くならない
つまり血管の収縮を抑制し、血圧の上昇を防ぐ!!
作用その2 アルドステロン召喚(活性化)を阻止、循環血液量は増えない
アルドステロンは召喚されません
よってカリウムとナトリウム+水分の物々交換も行われず循環血液量は増えません
作用その3 ブラジキニンが活性化し、血管は拡張 血圧が下がる
アンギオテンシンⅡを召喚する他にアンギオテンシン変換酵素にはもう一つお仕事があります
‶ブラジキニン”を働けなくする、不活化するという必殺技を持っています
このブラジキニンは血管を拡張させ血圧を下げることができる物質です
ACE阻害薬がアンギオテンシン変換酵素の働きを阻害することでブラジキニンは活性化
ブラジキニンの働きで血管は拡張し血圧は下がります
ACE(エーシーイー)阻害薬の副作用
副作用その1 高カリウム血症
アルドステロンが召喚されないためカリウムとナトリウムの物々交換が行われません
血中からカリウムを捨てないため血中のカリウムは上昇
高カリウム血症を引き起こすことがあります
そのため腎機能が悪い患者さんには使用できない場合があります
副作用その2 から咳
ブラジキニンが不活化されず大量発生することでから咳がでます
徐々にから咳が落ち着いてくる患者さんもいますが落ち着かない場合にはARBというお薬に変更することがあります