【心不全×利尿薬】心不全患者さんに処方される4種の利尿薬の効果やポイントをわかりやすく徹底解説

看護師勉強ノート
患者さん
患者さん

こんなに飲んだら薬だけでおなかいっぱいになっちゃうよ。

新人看護師
新人看護師

そうですよねー。毎日のことら大変ですよね。

(確かに多いんだよな・・・。これとこれ・・、あこれも利尿薬だけでも3剤あるし。しかもこれは今日から増えた利尿剤だ。)

体の中の余分な水、溢水いっすいを改善させるために処方される利尿薬

とはいえ3剤って・・・それでなくても心不全患者さんって内服が多いのに!

しかも入院してから薬を増やしたり減らしたり・・・。

先生たちは何を見て調節しているんだろう薬が多すぎてパニック

そんなあなたのお悩みをスッキリ解決

心不全患者さんに使用される利尿薬の効果やポイントぎゅっと絞って必要なところだけ、わかりやすく説明します!!

登場する利尿薬

・ループ利尿薬

・サイアザイド系利尿薬

・カリウム保持性利尿薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)

・アルドステロン受容体拮抗薬

先輩看護師
先輩看護師

利尿薬がどこに作用しているのか、どんな働きをしているのか

副作用と知っておきたいポイントが分かるとアセスメントが上達するよ。

\動画で知りたい方はこちらをどうぞ/
ハートナースの簡単レッスン

尿は何でできているのか?

まずはルール説明です

おしっこは何でできているか・・・それは血液です

これが尿細管のスタート地点に注目です

糸球体の血液が流れてくる勢いで濾されてできた原尿が将来がおしっことなります

その原尿が流れている管を尿細管といいます

利尿剤はこの尿細管に作用する

新人看護師
新人看護師

尿細管を流れる原尿は血液から出来ていたんだから・・・・

そうか!利尿剤は直接むくみとか血管の外にある余分な水分に働いてるわけじゃないんた。

先輩看護師
先輩看護師

その通り!利尿剤は血管内の水分を排泄させています。

つまづきポイント尿細管をわかりやすく

尿細管の始まりは近位尿細管

ここでは約60~70%が再吸収、半分以上が体の中へ戻ってきます

それだけ捨てられない大事なものが原尿の中にあるということです

大事なものであふれている近位尿細管に効く利尿剤があると生命の危険にさらされてしまう予感しかないので、近位尿細管に効く利尿剤はありません

・ヘンレループでは約20~30%再吸収

・遠位尿細管では約5%再吸収

・集合管では約5%再吸収

近位尿細管60%+ヘンレループ20%+遠位尿細管5%+集合管5%=90%!!

原尿は9割程度が再吸収されています

ループ利尿薬

作用部位はヘンレループ

ナトリウムを再吸収します

ナトリウムは水と結合しているので水とナトリウムを尿として捨てる

ナトリウム利尿」なんて言われることもあります

お薬の名前は

フロセミド、トラセミド、アゾセミド ○○セミドときたらループ利尿薬と覚えましょう

 

特徴

効きが早い

利尿効果が強い

血圧低下作用は小さい

そんなに効果があるならガンガン使おう!と言いたいところですが、そうもいきません

ループ利尿剤が効くことで血管内脱水

腎機能が低下、ラス系は亢進し溢水が改善しない→利尿薬を増やす→血管内脱水に

魔のループへ突入します

ポイント

・内服の効果を見ながら量や投与期間を調節

・ループ利尿薬投与後の尿量が分かるように記録に残しましょう

・長期的に投与する場合は長時間作用型のアゾセミド、トラセミドに変更されることがあります

サイアザイド系利尿薬

作用部位は遠位尿細管

名前はトリクロルメチアジド・・・もはや覚えられる気がしませんが気を取り直していきましょう

ループ利尿薬と同じナトリウム利尿です

ポイント

作用時間が長い

低用量でも効果が大きい

ループ利尿薬とくらべると利尿効果が弱い

血圧がさがりやすい

ナトリウム利尿の副作用

低ナトリウム血症

低カリウム血症

新人看護師
新人看護師

ナトリウムの再吸収を抑制するんだから体内のナトリウムがへって、低ナトリウム血症になるのはわかる

カリウムはなんで少なくなるの?

ナトリウム利尿の効果で遠位尿細管より先の尿細管にナトリウムがたくさんあります

周りの細胞が大量のナトリウムに異変を察知!

ナトリウムを増やすために取り込もうと働きます

電解質がどうのこうのっていう小難しい理由は全部無視して、ナトリウムを取り込むには物々交換として何かを捨てる必要があります

細胞は血液の中からカリウムを尿細管へ捨ててナトリウムを取り込みます

カリウム保持性利尿薬 ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬=MRA)

遠位尿細管と集合管に作用します

お薬の名前はエピロノラクトン、エプレレノン

ナトリウムの再吸収とカリウムの排泄を抑制します

ポイント

・利尿効果は弱い

ループ利尿薬と合わせて使用することで低カリウム血症を予防する

心保護作用を期待して処方される

新人看護師
新人看護師

突然心保護作用って・・・いったいどういうこと?

ループ利尿薬で登場した魔のループの図

カリウム保持性利尿薬はラス系の亢進を抑制する効果があります

カリウム保持性利尿薬の副作用

・高カリウム血症

ポイント

・腎機能の悪い患者さんには使用できないことがあります

モニター心電図やカリウムの値に注意しましょう

バソプレシン受容体拮抗薬

集合管に作用します

水の再吸収を抑制

水利尿」と言われることもあります

新人看護師
新人看護師

水だけを排泄してくれるって効果ありそう。最初に処方したらいいのに・・・。

先輩看護師
先輩看護師

そういうわけにはいかないの。

バソプレシン受容体拮抗薬が使える条件があるのよ。しかもナトリウム利尿のお薬と一緒に使うことで得られる効果もあるの。

ナトリウム利尿の薬剤を使用することで遠位尿細管より先の原尿にナトリウムがいっぱい

ナトリウムは水と結合しているから水分もいっぱい

集合管にある水分量が多ければよりバソプレシン受容体拮抗薬の効果が期待できます

ポイント

・利尿効果は超強力

・初めて処方される場合は入院での導入が必要

・ループ利尿薬などの薬物治療を行っても十分な効果が得られない心不全患者さんに導入できる

バソプレシン受容体拮抗薬の副作用

・高ナトリウム血症

ポイント

・超高齢や自分で飲水行動がとれない患者さんへはリスクが大きく処方されないことがあります

・バソプレシン受容体拮抗薬の効果でループ利尿薬などを減量できることがあります

・ループ利尿薬を減らせることで腎機能増悪の予防や低ナトリウム血症の予防が期待できます

まとめ(特徴と副作用)

まとめ

・ループ利尿剤はナトリウム利尿 効きが早くて利尿作用が大きい

 副作用:低ナトリウム血症 低カリウム血症

・サイアザイド系利尿薬 利尿作用は弱いが長く効く

 副作用:低ナトリウム血症 低カリウム血症 

・カリウム保持性利尿薬(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)

 利尿効果は弱いがループ利尿薬などと併用で低カリウム血症を予防

・バソプレシン受容体拮抗薬

 他の利尿剤で効果が十分でない心不全患者さんに適応

 副作用:高ナトリウム血症