心不全のステージ分類って言われてみれば聞いたことあるような・・・。
でもそういう分類って知っていても日々の業務で役に立つの?
心不全患者さんって高齢の方や再入院してくる人も多いし
一度入院するとなかなか退院できない人もいるし、
病名が同じ心不全でも症状や経過が患者さんごとにいろいろで一筋縄ではいかないのよね
既往歴も沢山あったり、内服も点滴も多かったり・・・ちょっと大変なイメージ💦
入院期間の長期化やADL低下、再入院予防など療養指導やリハビリをしなければと感じてはいるけれど
患者さんごとにバラエティーに富みすぎて療養指導するにもどこから手を付けていいやら・・・
そんな看護師さん必見!心不全進展ステージの臨床でのトリセツを徹底解説
心不全療養指導士の症例や筆記試験でも進展ステージは肝になっています
心不全療養指導の初めの一歩
心不全進展ステージ分類を使って、患者さんと同じスタートラインに並んで立ちましょう
心不全の進展ステージとは
これが心不全の進展ステージです
あ~これね。なんとなく見たことあるような気もする・・・かな。
まずはこの心不全進展ステージへの理解を深めましょう
臨床で活用するために最低限知っておいて欲しいところだけに絞って解説します
ステージA
高血圧や糖尿病などの慢性疾患、生活習慣病を持つ患者さんがここです
最初から驚きの展開
なんと心不全は愚か心臓に病気すらない患者さんがステージAに入ります
ステージB
心筋梗塞や不整脈など心臓に病気のある患者さんがここ、ステージBに入ります
まだ心不全患者さんは登場しません
ステージC
ようやく心不全患者さんの登場です
一度でも心不全と診断された患者さんはこのステージCになります
恐らく療養指導の現場、病棟や心不全療養外来などで1番遭遇確率の高い患者さんがこのステージCではないでしょうか
ステージD
心不全で入院加療中で強心薬などの持続点滴投与がやめられない患者さんがステージDです
自宅退院が難しい患者さんです
内服治療の限界、末期心不全なんて言われることもあります
心不全進展ステージは一方通行
ここで1つ注意点です
この心不全進展ステージは一方通行
入院した時はじっとしているだけでも息苦しかったのに、退院間近になったらスタスタ歩いている1号室の患者さん、もう治っちゃったよって言ってたな
あんなに元気になったんだからステージCからBになったんじゃ・・・。
1度ダメージを受けた心臓は、何もなかった時のように機能が回復することはないの
同様にいくら元気になっても心筋梗塞や糖尿病が体から消えてなくなることはないわよね
だからCからB、BからAみたいに心不全進展ステージが逆方向へ進むことはないの
病みの軌跡をわかりやすく
心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮
JCS2017_tsutsui_h.pdf (j-circ.or.jp)
める病気です
心不全ステージ分類の赤丸をつけた部分
この赤丸部分が心不全の一般向け定義を表しています
病みの軌跡といわれるものです
縦軸に身体機能、横軸は時間経過を表しています
誰しも時間経過とともに身体機能が低下しますが、心不全患者さんの病み軌跡はどうでしょう
黒線は病気のない人、赤線が心不全患者さんです
ガクッと下がっている箇所が急性増悪
急性増悪後治療により身体機能は回復します
しかし元の身体機能までは回復しません
再入院を繰り返すと死期を早めることへ繋がってしまいます
再入院を回避できれば健康な人と遜色なくその人らしい人生を送れる時間が増えます
ではほかの病気の病みの軌跡はどのように経過するのでしょうか
がんと老衰患者さんを例にあげて説明します
どちらの患者さんも1度落ちてしまった身体機能は回復しません
徐々に身体機能が低下していく中で患者さん自身も周りの家族も徐々に近づく死を意識していきます
心不全患者さんはガクンと身体機能が落ちてもまた回復する
何度も回復できるという体験を繰り返すことで悪くなっても治る、入院してもまた歩いて退院できるというイメージを抱く患者さんが大勢います
回復することは良いことですがこの体験が退院後の生活習慣是正の弊害となる場合もあります
だからこそ、再入院回避するために健康管理に必要な生活習慣を身に付けてもらうことが必要と知ってもらうこと重要なの
そのためにはまず心不全について正しい知識を伝えないとね
そこで役立つのが心不全進展ステージ!
心不全の進展ステージ、臨床での活用方法
再入院しないためには生活習慣の見直しが必要
それに患者さんが気付いてもらうために、心不全の病みの軌跡や今どのステージにいるかを伝えることが必要なのよね
唐突に「心不全進展ステージは・・・」なんて始めるわけにいかないし
どうやって伝えたらいいんだろう
心不全だから、患者指導が必要だからと言って受け持ち初日に
「あなたは心不全進展ステージCです 心不全は徐々に悪くなり生命を縮めます」
なんて、2つのバッドニュースを伝えてたらその先にある具体的な療養指導まで、遠い道のりになってしまいそうな予感しかありません
ではどうやって切り出したらよいのでしょうか
いよいよ日々の業務中、臨床の場での心不全進展ステージ活用方法についてです
様々な心不全患者さんがおられると思いますが今回はステージCの初発心不全患者さんを例に解説していきます
バッドニュースを伝える事前準備
心不全初発入院の患者さんに心不全進展ステージを使ってCと伝えるための事前準備
バッドニュース伝える時必要になるのは信頼関係です
信頼関係に繋がる「聴く」
コミュニケーションの中からこれは聞きたいと思う内容をまとめました
限られた時間や多重業務の中で患者さんと直接お話できる時間にも限りがあります
基本姿勢は患者さんに沢山語ってもらうことが目的なので話が脱線することもあると思いますが
上記の内容を思い描きながら聞けると良いと思います
例えば・・・
入院患者さん
先生から心不全って聞いているよ
心臓が悪くなるなんて思ってなかったな・・・。
よくテレビの芸能ニュースで聞く病名だけど、まさか自分が心不全になるなんて驚いたよ
まぁそうでしたか。
入院する前はどんな症状があったのですか?
入院患者さん
いや~苦しくて苦しくて。普段だったら休憩なんかしないでスーパーまで歩けるのに入院する1週間くらい前から休み休みじゃないと歩けなくなって
足もぱんぱん腫れちゃうし大変だったよ
じゃあ入院してだいぶ楽になりましたね
今は入院前と比べてお辛い症状はありますか?
入院患者さん
今は嘘みたいになんともなくなっちゃったよ
点滴も酸素もなくなったし、歩いてもなんともないね
もう治っちゃったんじゃないかな
よくテレビで味噌汁が体にいいっていうの聞くからさ、入院前は毎日欠かさず飲むようにしてたんだよ
入院すると思うけどやっぱり健康は大事だね
辛かった症状がなくなって本当に良かったです
病気になると健康のありがたみを感じますよね
入院前から健康管理に関心をお持ちでいろいろされていたんですね
多くの患者さんは入院中医療スタッフに体調や今までの生活のことを聞かれると入院するまでの経過や思いなどを語ってくれます
患者さんが語りだしたらもう大丈夫 ここからはひたすら興味を持って聞くに専念します
もしかしたら途中で自己流の誤った健康観や健康習慣の話になるかもしれません
味噌汁毎日・・・なんていわれると脳裏に減塩の2文字がババンと出てきますがぐっとこらえましょう
ここで「それは違います!」と十分な信頼関係ができていないときに指導モードに入ってしまうと、いくら正しく必要な情報でも患者さんには届きません
それが良かった、悪かったはさておき、そうだったんですね
それは大変でしたね などひたすら相槌と共感とねぎらいで聴くに徹します
医療スタッフに自分の話をじっくり聞いてもらったという体験は信頼関係へと発展します
必要な情報の伝えよう
まずは2つのバッドニュースを伝えます
心不全で入院していると知っている患者さんに心不全進展ステージを使って
あなたはこの表(心不全ステージ分類)でいうと「C」になります
と衝撃の告白をします
すると多くの患者さんは
入院患者さん
え・・・もうC? 初めての入院なのに??
となります
なのでそれぞれのステージの説明と病みの軌跡の図を見せながら、再入院することが如何に今後の人生において悪影響かを伝えます
入院しないほうがいいのはわかるけど、自分ではどうしようもないでしょ
心不全患者さんが入院する理由ってなんだと思いますか?
心機能そのものが低下すると思われるかもしれませんが多くはそうではないんです
怠薬や食事の不摂生、動きすぎや動かなすぎなど生活習慣が原因で再入院される方が6割以上なんです
ということはこれからの生活を気を付けていれば半分以上の入院を防ぐくことができるんです。
そうか、食事かぁ。あとはどんなことに気を付ければいいんだい?
ここでで先ほど事前準備として聞いていた内容が役立ちます
入院前の生活を患者さん自ら語ってもらうことで、この話をする頃には入院の引き金となった問題の生活習慣にあたりがついてるはずです
ここまでくればゴールはすぐそこです♪
心不全療養指導のスタートライン
患者さんは誰にも言われなくてもこれからの生活、何がしたいか、何ができるか、いつまで生きたいかなど人生観について大なり小なり考えることでしょう
私たちはその思いをしっかりと受け止め、先ほどと同様にしっかりと聴きます
患者さんが思い描く生活ができるように、必要なセルフケア習慣についてできることを一緒に考えましょう
ここが心不全療養指導のスタートラインです